開店躁だん

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【作曲覚書】-shinobi- (作詞 MOAMi /作曲 佐々木典子)

 

シンガーソングライターとしてご活躍されている、MOAMiさん

lit.link

との共作「-shinobi-」を14日、ご本人のライブにて初披露しました。
    
10/14(土)『メロンの皮』緊急特別企画LIVE〜直接伝えたいことがあるのよ〜MOAMiピアノ弾き語りLIVE
アルカフェにて3回目のライブとなりましたが、今回はお酒に関係した曲をカヴァーとオリジナル交えてお届けする趣向。
おかげさまでお酒のオーダーが進むこと進むこと、大感謝でした。わは!

本編ステージが終わったあと、アンコールの1曲目として。

♪演奏動画

【クラファン連動企画第4弾最終日、アルカフェから弾き語りライブ / MOAMiキャス】
https://twitcasting.tv/moamidayo/movie/778759429
※1:18あたりからです。演奏前にMOAMiさんがこの作品を作る動機などを紹介しています。

♪セルフカバー
【20231022alcafesta】
https://youtu.be/dtgJ3wBZVys?t=483

 

-shinobi-    

作詞MOAMi 作曲 佐々木典子

 2023.7.19

1.

「涙など出ぬ」そう思ってたから
自分の気持ちに驚いたふりをした
生命(いのち)あるもの
いつか果てがくるもの
そう思ってたから
まるで知らぬふりをしたのさ

別れはいつもさみしい
とっくに見えていたのに
いつからか怖気付き
わかったふりをしたんだ

さよなら またね 
そしてありがとう
あなたの笑顔が過るよ(よぎる)
この心

さよなら どうか
また会う日まで
わたしのことを
忘れないでいてね

2.

見慣れた景色 大好きな道
しばらくぶりに吸いこむ夏の果(はて)
この空の高さと
青さを知れば
都会の空では
まるで物足りないはずさ

出逢いはいつも必然に
やってくるものですか
いつからかねわたしは
しらけたふりをしたんだ

さよならニ度と
目を見て話せないのね
あなたの寝言が過るよ(よぎる)
この部屋に

さよならせめて
また会えたなら
わたしを抱きしめてくれる?
そう強く…

あの世はどんな処(とこ)
生きてりゃ知り得ないね
どうかそこから
わたしを見守っててください

さよなら またね 
そしてありがとう
あなたの笑顔が過るよ(よぎる)
この心

さよなら どうか
また会う日まで
わたしのことを
忘れないでいてね

会いに行ける(ゆける)
その日まで
さよならまたね

MOAMiさんがツイキャスで紹介してくれていますが、私とtmrr(たまる)さんとの共作「それで、さよなら」をMOAMiさんが気に入ってくださって、拙サウンドクラウドhttps://soundcloud.com/alcafe_ogikubo)をヘビロテしてくれたことがはじまりでした。
7/17(月祝)のMOAMiさんライブのO.A.で「それで、さよなら」を歌って頂き、私が伴奏しました。

それで終わると思っていましたが、まさに「出逢いは必然にやってくるものですか」
いつかコラボできればいいですね、なんて話はまだ遠い先かなあなどと思ってました。

そしたら、

7/19(水)に詞がフルコーラス分送られてきました。ひ!は、はやい、、!
MOAMiさんのご祖父様への想いを綴った詞です。

まず、詞を見て思ったことは、私の想像している言葉より
内省的かつ中性的(?)だったことです。

「まるで知らぬふりをしたのさ」

まず、「~したのさ」といふ言い回しに「へえええ」と思いました。ちょっと心から距離を置く表現としてこう言うのか、
ちょっと斜めから見たような言い回しは、自分の中では新しく感じました。
なので、斜め表現を出したくて、ブルージーな進行を付けてみました。韜晦する感じかな。

それはともかく、詞としての体裁は完成しているので、こりゃあなんとかしなくちゃ!
と慌てました。

7/25(火)に曲とコードを付けた楽譜を送りました。1週間で出来たのは
自分ではまずまずのスピードといったところ。結構必死でしたが
自分のつぶやきを過去検索したら、詞を頂いたその日にこんなことをつぶやいてました。うっとうしいので19日のつぶやき限定w

**
曲を成す前に重松清の小説を買う。
うわーーーーやめてやめて曲が書けちゃう
アタマが曲に支配される
そもそもアルカフェが壮大なコラボレーション現場
鍵盤ない時はメロとベースを歌いますボイスメモ
うええん勝手にイントロ出てくるのやめてのうみそ
やめて、曲が襲ってくる
おりてきさうで不安←待て
サビでける。ひーん
こころが動くことが多すぐる。
うつくちい
たぶんこれがヒントになる
おりてくるのを押し留める作業
共作は自由度が増すのかもしれないナー。イマジネーションの羽ばたき
自分のこと全然信用してないけど、コラボレーションとしての確かさは信用してます。まじ
ぷりぷりイカリながら45分で作った曲が、ひとさまの琴線に触れることになるとは、これもまさかのひとつなので、受け身でも何でもレッツトライ。
**

以下、曲から見た時の解釈です。あくまで私の見解ですが、作曲ノートとして記しておきます。

サビですが、悲しい気持ちと、それを乗り越えたい気持ちとを同居させなければいけないと思いました。

「さよなら」と「またね」は同じ音フレーズですが、コードを変えてます。
「さよなら」と「またね」はそれでも同じ世界線上なのですが、「そしてありがとう」はABを超えた新たな思いです。

A「さよなら」は悲しい決意
B「またね」は乗り越えることを躊躇する想い

C「そしてありがとう」ABから導き出された、新しい思いとしてメロをジャンプさせています。

A→B→Cの変化をこのような進行にしました。

 Ab        C7
さよなら またね 
         Ebm7  Ab7 
そしてありがとう


あなたの笑顔が過るよ(よぎる)
この心


Fm7      Edim7
さよなら どうか
Ebm7         Dm7(b5)
また会う日まで

わたしのことを
忘れないでいてね

そして、ふたたび出てくる「さよなら」は最初の「さよなら」と違ってマイナー(短調)です。
「また会う日まで」は「そしてありがとう」と同じコードを充てています。
このふたつのフレーズが近しい関係であることを示します。

そして、アウトロはイントロと同じく、マイナーの旋律です。
悲しい悼む気持ちがどう変化していくかを曲で紡いでいこうと
サビを作ったときに思いました。
わたしのコードチェンジはとにかく忙しいのですが、
歌詞の煌めく角度を少しずつ変えるために光源を当てたり
翳りを作ったり、カメラワークに似ているなあと思います。

サビだけで熱く語っちゃいましたが、きりがないので、あと、オオサビだけ。

Dbm7     Gb9             Cb(=B)  Abm7
あの世はどんな処(とこ)
Bbm7       Eb7          Ab  Fm7
生きてりゃ知り得ないね
Dbm7    Gb7  
どうかそこから
  Cb  Gb/Bb Abm7    Bbm7                C7
わたしを                 見守っててください

「あの世はどんな処(とこ)」

このオオサビを見てひーーーーー!と最初思いました(笑)

え!!!あの世ってどんなとこなの?いやいやいや丹波哲郎に訊かないと分からないよ。どういふ感情を曲に起こせばいいのか。

そこで考えました。
このオオサビにはMOAMiさんが3人います。

A「あの世はどんな処(とこ)」と訊ねているMOAMiさんは幼い女の子です。ご祖父様に無邪気に訊ねている姿が見えました。
曲のKey-Abが一瞬B-Majorに明るく転調します。過去の時間軸を表現しています。

B「生きてりゃ知り得ないね」この言葉はもしかしたらMOAMiさんに訊ねられたご祖父様がそのように応えられたかもしれません。
「あの世は~」に呼応しますが、「生きてりゃ知り得ないね」といふフレーズは「まるで知らぬふりをしたのさ」にも近い、
韜晦を感じさせる、‘今の’MOAMiさんの言葉でもあります。

ABを経て、C「どうかそこから私を見守っててください」といふフレーズは未来のMOAMiさんにも重なります。
この曲の中で一番長いロングトーンを書いているのは、この思いがおそらくこれからもずっと続くからだと思います。

A過去:B現在:C未来と、3人のMOAMiさんがいるオオサビには3つの時間軸が含まれていることになります。


もちろん、そのようなことを思って曲を作るわけではありませんが、後から解釈すると
そのようなことを無意識に思いながら曲とコードを付けていっているようです。
おりてきた!と思ってるときは、とにかくフレーズに突き動かされるわけですが、
詞が原石なら、曲を作ることは原石を彫り込んでいく作業だと思います。
詞を読み込み感情を想像して、そこに曲を盛り込んでいく。
大変なんですが、愉しい作業でもあります。

やや不謹慎な物言いですが、ひとりの女性が綴る心ノートを立体的に浮かび上がらせることができたのは
私にとっても貴重な体験でした。

実は私も一年前、父を亡くしたときに詞曲を作りましたが、自分で歌うのはややキツイので封印中です。
失礼ながら、MOAMiさんの言葉に曲をつけることで、肉親を悼む感情をこうして曲にすることが出来たのは
何かのご縁なのかもしれないナーと思っています。

「-shinobi-」というタイトルは、曲ができてから、MOAMiさんが付けてくださいました。
偲ぶ 忍ぶ どちらの意味も込めていらっしゃるそうです。
わたしもセルフカバーを近日公開したいと思います。
このたびのコラボ機会に感謝いたします。

※top写真はフリー素材から北海道の草原風景

終演後、MOAMiさんと。