上巻(前回までのあらすじ)はコチラ⇒https://dannori.hatenablog.com/entry/2019/08/26/115638
舞台変わって、ここは尼カフェ(だんだん寺)。尼カフェといっても、尼僧はだんだんのみで、あとは男子のみ。
朝の勤行で新曲披露の会。100人の修行僧が控える中、まず壇上に昇るのは
絶世の美形僧、こまき僧正(そこそこ位の高い層)。
こまき僧正
♪ひとりゐてみはるかすのみ ひらかざる窓よりゆめをひかりの庭を
和歌が詠まれる。一同、ほうっっっっと感嘆の声。
その後、数人の修行僧による新曲発表会が行われるが、いまひとつ盛り上がらないまま勤行が終る。
みゆき、勤行が終るやいなや、こまき僧正に駆け寄る。
みゆき「短歌いいですね!曲つけてもいいですか?」
こまき「え、うん、いいよ。それじゃ、毎月25日に持ってきてね」
昼からみゆきとまる、だんだんよりレクチャーを受ける。
勤行用の曲を描いて最後までみんなに集中して聴いてもらへたら、レコード業界にデビューさせる約束なのだ。
まだ無事デビューにこぎつけた者はいない。
だんだんによる指導は続く。まず、作詞から確認。
みゆき、歌詞を見せたら、だんだんに即却下。
だんだん「だめ!ギター仙人流にしても、モテ煩悶しか感じられない!チーン!!!」
いきなり歌詞を鼻紙にされる。ゴゴゴゴ
とある、安息日。ホーリー長者とカンナ姫が寄進にやってくる。彼らはだんだん寺のパトロンかつ、在家の信者なのだ。
カンナ姫の歌を聴いて、みゆき愕然とする。
みゆき「なんて綺麗な歌を奏でるのだ。彼女に捧げるモテソング作りたい!」
さて、一方、まるはといふと、ドーナツ・ショックにより、なかなか筆が進まない。夏休みが終わったあとの放心状態。
そこへ、新しい修行僧が入門する。たまる丸と名乗る若い男だが、実は、男装した、たまる巫女であった。まるとみゆきの後を追いかけてきたのだ。
清掃の時間。たまる丸、廊下を磨いていたら、放心して縁側より庭をぼうっと見ているまるを見つける。思わず声をかける
たまる丸「話は聞いたけどさー。ドーナツ・サンバは、ただ、ドーナツ女人國で美女にモテたいために描いた曲でしょ。自分が本気で追いかけたいテーマとか、ないの?」たまる丸。なかなか良いこといふね。
だんだん寺の宗派は、浄土真宗といい、基本、妻帯や肉食・飲酒もOKといふ、ゆるいルールだが、“モテ”だけは邪心としてNGだった。モテるのはよい、だが、モテたいとだけ、ひた願ふのは、すべての煩悩の中で最も悪心なのだと。“悪心モテ説”を主張する教理であった。
“モテ”からの解脱(げだつ)には女性(にょしょう)NGとして、寺院には尼さんもいない(だんだんは寺マネージャーにつき特別OKだった)。
さて、週に一度の安息日に訪れるカンナ姫だが、こまき僧正に懸想していた。
カンナ姫「王子様のやうな美しさ。素晴らしい和歌。でも、あの人にモテたいと思ったら、私はモテ邪心を持ってしまうことになるのね。だんだん寺に通えなくなってしまう。どうしたらいいの?でも...」
懊悩するカンナ姫の姿もまた、美しい。
昼下がり、庭の清掃をしていたみゆき。手紙を拾う。
みゆき「ん?中身なんだろ」
それは実に美しい美恋文だった。
宛名は、こまき僧正さまへカンナ姫より。
がーん!みゆき、大ショック。だがモテには騎士道も含まれていたよな。と思い返す。
確かギター仙人の教へ。女性の想いは何より優先されるべきものだと。。
通りかかった、だんだんに手紙を渡す。
みゆき「だんだん!お願いがあります!二人の恋を許してやってください!お似合いだと思うし!」
だんだん。「あーいいよ。カンナ姫は在家だし、相思相愛なら別に禁止してないし。うちが禁止してるのはね、モ!テ!とにかくだめなのはモテ思想なのよ」
みゆき呆気に取られ、この寺を出る決意をする。
みゆき(なんでモテが悪いんだらう。全てに勝る、生きるモチベーションなのに。。)
みゆき「それにしても、この恋文。ホント名文ですよね。」
だんだん「あーそれ、私が書いたの。カンナ姫に頼まれて。これから曲つけるってさ」
みゆき「え!!だんだんが!?僕もこの詞に曲つけていいですか!?」
だんだん「あーいいよ」
こまき僧正を呼び出し告白するカンナ姫。
カンナ姫「あの、こ、これ、読んでください!」
袂から手紙を出そうとしたら、まさかの手紙が、ない。うん、ないよね。落としちゃったからね。
カンナ姫(あら?な、ないわ。。まあ仕方ない!言っちゃうわ!)
♪あなたが好きー死ぬほどすーきー こーのー愛うけとめてーほしいよ~
ソプラノの超萌え高音で歌ふカンナ姫。
こまき僧正「貴女は大変魅力的ですが、私は修行の身。どうかお許しください。」
カンナ姫「そうですが。。分かりました。私の言ったことはお忘れください。これからも素晴らしい和歌を心待ちにしています。」
こまき僧正が去ったあと、カンナ姫、泣き崩れつつ、ギターを取り出して歌う。
♪PAPA
PAPAとは、明るく心優しい、ホーリー長者のことである。実に胸を打つバラード。
さきほどから物陰で一部始終を見守ってたみゆき、カンナ姫の歌声を聴き、飛び出す!
みゆき「カンナ姫!貴女のオリジナル・ソングは素晴らしい!ぜひ僕と一緒にツーマン・ライブやってください!」
カンナ姫、戸惑いつつも「え、ええ、喜んで。」涙の跡を頬に残して微笑んだ。
えがったね!だんだん寺に伝わる、2ヶ月に1度、ギター・ポップス・ライブの始まりである。
一方。縁側でぼうっとしていた、まる、突如発起して
歌詞をありとあらゆる所に書き始める。畳に!壁に!天井に!はたまた書くところが無くなったので、僧服を脱いで自分の肌にも書き始める。
と、同時に歌い出す。その姿はのちに、空也上人像のモデルになったことは、まだ誰も知らない。まるの歌詞は口から迸る。とてつもなく長い新曲は、読経のやうだ。
だんだん「まるさん、耳だけ残ってるから歌詞書いたげるね」耳だいじ👂
歌詞の一部を耳に書く。これであんしん!
まる新曲
♪生まれて死ぬまで
まるの魂は市中パレード以来、100重ねドーナツの中で彷徨っていたが、ドーナツ胎内回帰を経て、生生流転をインナートリップとして体験していたのだ。
トリップ沸点の瞬間、突如、歌詞として洪水のやうに溢れ出したのだった。
既に書くところが無くなり、ただ歌い続ける、まるの姿を見て、だんだんは放送室へ。
だんだんアナウンス「寺院のみなさまにお報せします。ただいまよりYouTube配信を始めます」
だんだん、思わずシャウト!「みんな、聴いて!これこそ、勤行ソングよ!」
放送が始まるやいなや、皆の衆、その場で座禅を組み合掌する。
100僧侶の祈りが集中し、だんだん寺からものすごいオーラが発せられた。レーザー・ショーか!?
そこへ、カンナ姫が帰ってこないので心配でやって来たホーリー長者。寺の様子を見て驚くが、まるの歌を聴くやいなや、肩にかけた赤黄緑のギターを降ろし、叫んだ。
ホーリー長者「いいヴォーカルだね!アコギ一本勝負もこれより参戦!」
即興でものすごいアコギを弾き出す。
♪テキーラ!
ホーリー長者のアコギ演奏は寺の外まで鳴り響き、在家の信者もつられて踊り出す。テキーラ!高円寺の阿波踊りか!踊り念仏衆
まるの勤行ソングは三日三晩続いた。ホーリー長者もテキーラ呑んでは起き呑んでは起き、ギターが鳴り響いた。
だが、ただひとり、この騒ぎを知らない者がいた。
みゆきだ。みゆきは、だんだん寺の懺悔室(モテを懸想した者が自らを罰するために入る部屋)に自ら篭り、例の恋文歌詞に曲を付けていた。懺悔室は完全防音だったため、外部音もシャットアウトされてたのだ。
三日三晩が過ぎ去ったのと同刻、みゆき、出来た!完成した!
全てが終わり果てた、誰もが寝てるか放心状態の寺庭に足を踏み出した。ギターをかき鳴らす。
♪何処かにある恋
最後のフレーズを弾き終わると、誰よりも一番放心状態のまるに、
みゆき「まるさん、この曲でもう一度勝負しよう!」
まる「ご、ごめん、今ちょっと寝かせて。。」
それからまるは一週間まるまる寝た。
まるが目覚めたころ、みゆきは既に旅立っていた。歌詞を求める旅に出ると書き残して。
たまる丸、寝ぼけまなこの、まるの枕元に来て
たまる丸「みゆきさん、まるさん起きないか3日は待ってたんだけど。
勤行ソングの話をみんなから聞かされて、同じ分量の歌詞を探しに行くって。。」
まる「みゆきさん、あたまおかしいよ」
まるくんもおかしいって。
まる「こうしちゃいられない!みゆきさんを追いかけて勝負つけてくる!」脱兎のごとく布団を蹴飛ばして駆け出そうとした!
たまる丸「待って!私、いや、オレも行く!」
たまる丸、いや、たまる巫女は、ドーナツ女人國で起こった市中パレード・デモを予言出来なかったと、あの騒動のあと、裁判にかけられていた。
判決により、まるとみゆきの勝負再開を命ぜられた。「勝負に勝った方を國再建責任者として連れてくるべし」と、密命を受けていたのだ。
僧服のまま、ふたりとも駆け出したが、途中で立ち止まる。
まる「みゆきさん、何処に行ったんだ?」
そこへ後ろから呑気な声が。
だんだん「おーい、みゆきくんだけど、前はギター仙人探して山へ篭ったから、今度は海へ行くって〜。海岸通りは、この先真っ直ぐ行って坂を下りたら直ぐだから。」
まると、たまる丸同時に「ありがとう!」
いちもくさんに海岸通りへ。停泊していた船に飛び乗る。船出の時が来た。
だんだん、寺の山門から船が出航するのを目を細くして見つめる。
「あ、みゆきくん、25日の短歌曲あるし、来月偶数月カンナ姫とのライブあるから、それまでに戻るって言ってたな。言い忘れたか。
ま、いいか。可愛い子には旅をさせろ、だ。てへ!」
だんだん、ゆっくりとした足取りで門をくぐると、ぱたんと閉めた。
おしまい
◆エピローグ
この後、みゆきが先行して乗った船は遭難するのだが、海中で出くわした浦島亀美・歩美姉妹に助けられて、川崎竜宮城に行くことになる。そこには、ひろき、ゆうき、うす姫の3兄弟妹が住んでいたが、末娘のうす姫に気に入られ、竜宮城でもひと騒動。
一方、まると、たまる丸の乗った船は海賊に襲われる。ピンチ!のところで、たまる丸が予知能力を発揮!平伏した海賊たちは、たまる丸の予知と度胸に感嘆し、海賊船の頭ヘッドとして迎え入れる。まるは、たまる丸の兄(名前が似ているから疑うものは誰もいなかった)として、行動を共にすることになる。
のだが、これはまたの機会に。
サンズ絵巻、彼らの旅は理由なく続いていくのだった。めでたしめでたし!てへ!
♪エンドロール・メドレー:
君はドーナツ
ダブルバインド~令和元年のサマーデイズ~
死にたい☆消えたい☆パーリナイ!
出演:
まる:まる
みゆき:島林深雪
たまる巫女(たまる丸):たまる
しんpay pay:しんぺい(from TRIO the CMYK )
うに:うにさん
カンナ姫:kanna
こまき僧正:栗原寛
ギター仙人:格さん(from leaf room)※友情出演
ホーリー長者:堀尾和孝 ※友情出演
だんだん(アルカフェ宿場だん):だん
脚本・演出・監督:だん(やんないよw)
◆サンズ絵巻拾遺
サンズ絵巻エピローグ続き。たまる丸とまるを乗せた海賊船は、
8つの秘珠を集めたら全海原を統治できるため、たまる丸とまるを案内役とし、
数々の謎解きに挑戦することに。ひとつ珠が集まるごとに停泊し、たまる感謝祭を開催するのだった。
一方、川崎竜宮城でうす姫の奏でる88鍵盤ピアノの素晴らしさに魅了されたみゆきは、時の経つのを忘れた。ある日、お腹が痛いと泣いている亀の子を見つける。おなかさすりさすりしてたら、プッと美しい珠を吐いた。その珠を見てみゆき。この珠は仲間を呼んでいる。探さなきゃ!川崎竜宮城を出る決意をする。
◆訳注
◇ドーナツ女人國
大陸や半島から移住した渡来人の末裔である。半島でもデザイン技術集団として活躍していたが、男性主導社会だったため、男女の利益分配比が不当だった。
そのため、数人の女性リーダーが日本へ向かった。途中嵐のため、船が沈没したとき、目指す日本の方角から巨大な浮き輪が流れてきた。これがドーナツ信仰の始まりである。
ドーナツ女人國建立後、小麦からドーナツを作る技術を開発。ドーナツも穴があいたスタンダードから、ねじり唐草模様の高級品ツイスト☆ドーナツまでバリエーション豊かだった。
男性を入れると政治も経済も混乱するとし、“女性がつくる豊かな国”をスローガンとしていたが、ドーナツ輸出や日本語教育のため、就労ビザを取得して居住を許可される日本男性や外国男性は、少数ながらいた。
しかし、まるのように密入国する男性も少なからず。美女とドーナツに囲まれたいと多数男性が密入国するも、ろくに仕事も与えられず貧民窟でくすぶっていたのだった。その中で美形男性を集めたホストクラブも貧民窟の中にあり、こっそり通う女人國民もいた。いつの世も繁華街とはそういふものである。
つまり貧民窟には不満分子の男性が多くいたので、デモは簡単に成立したのだった。ついでに言うと、100重ねドーナツは、表面に花や唐草模様がデコされた、ドーナツ型ウェディングケーキのやうだった。茶色は茶色のままなので、遠くから見たらバベルの塔のやうでもあった。まあ奢れるものは久しからず。バベルのドーナツ解体は歴史の必定である。