開店躁だん

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【お盆三題】

お盆が近くなると、心がざわざわするのか、よく夢を見ます。
過去最大怖かったのは、夜毎に距離が近くなる八尺様みたいな女とかですが、
それ以外にも天狗みたいに山に登ったり、のうみその働きが普段と異なるのを感じます。

さて、今年は以下の三題です。

【手】

薄暗いところで祖母が背中を向けている。どうやら泣いている様子。
「どうしたの?」と尋ねたら、手が動かないとのこと。
右手を堅く握りしめたまま、開かなくなっているようだ。
何もできず私も同じ姿勢でうつむいていた。

【似顔絵】

スケッチブックを開いて、女の人の顔を描き始める。
エンピツで輪郭をなぞる。瓜実型の柔和な輪郭だ。
髪型はストレートロング。
なぜか筆圧が上がっていくにつれ、
黒く塗りつぶす部分が多くなる。
髪型はいつしか、うねる黒髪になり、
エラがはった骨太な輪郭になっていく。
黒目がギラギラとした男の顔が出来上がっていく。
ラテン系の男がギラギラした瞳を輝かせ笑っている。
悪意を感じる。笑いが大きくなっていき
もう少しで完成するところで、

このまま描いたらだめだ!!!

そう思った途端、顔の上に大きく×を描き、バタンとスケッチブックを閉じた。
私は一体、誰の顔を描き始めて、誰の顔を完成させるところだったのか。

【名前】

実家の寺の奥座敷。襖を開け解放した畳部屋に子供が4人
寝転がって遊んでいる。年齢は年長が10歳位で、
7歳、5歳と続き、一番下の子が3歳といった感じだ。
遊び飽きたのか、ひとりまたひとり、廊下に出て行き、
今度は廊下を這って進んだり、走ったりしている。

私も昔は同じように、廊下をぐるぐる、兄弟や友達と走り回ったなあなどと
懐かしい目で見ていた。

台所にみんな集まってきたところで、
「みんな、名前はなんていうの?」
と尋ねてみた。すると、全員が口を揃えて、
「M田!」
と言うではないか。
「そりゃあみんなM田だよ(笑)ひとりひとり教えてよ。」
兄弟だから同じ名字だよなあ。この子たちからかってるのかと、
笑いながら再び聞いてみたのだが、
その問いに誰も返事をしない。黙って私を見つめるだけだ。

7歳くらいの子が私の傍に寄って来たので、
ふと見てみたら、ノースリーブの柄物シャツ、
左肩の端にローマ字で「K」と書いてある。

「そっか。Kくんか〜」と言って肩を抱いたら
その子は、はにかみながら黙って微笑んだ。

そこで目が覚めた。悲しい気持ちになった。
お盆はかつて親しくした泉下の方々を偲ぶ行事だが
名前を持たない子たちもまた、郷里に帰るように
お盆を楽しみたいと思うのだろう。
奥座敷の裏手には水子供養塔があることを思い出した。