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〈作曲覚書〉栗原寛第四歌集『鏡の私小説』より  短歌組曲「朝のオレンジ-シチリア、ローマ」 (短歌 栗原寛 作曲 佐々木典子)

〈作曲覚書〉栗原寛第四歌集『鏡の私小説』より
短歌組曲「朝のオレンジ-シチリア、ローマ」
(短歌 栗原寛 作曲 佐々木典子)

♪お初出し動画(短歌朗読、ヴォーカル&コーラス:栗原寛/栗原トーク付)
https://youtu.be/QDWa6kc52O0?t=469

栗原寛第四歌集『鏡の私小説』より
短歌組曲「朝のオレンジ-シチリア、ローマ」
(短歌 栗原寛 作曲 佐々木典子)

飛行機は
あをぞらは
十字架
ピエタ
雨に滲む

==============================

飛行機は西へ西へと向かひをり夜空に時を溯りつつ

あをぞらはどこまでもあを ゆびさきに香りを残す朝のオレンジ

大人になるたびに失ひゆくなにか丸知野(マルティーノ)の手にひかる十字架

硝子ごしに見てゐるピエタ胸うすきイエスを抱きマリアうつむく

雨に滲むローマの街に何もかもはるかとなりて旅は終れり

==============================

各短歌タイトルは私が付けさせて頂きました(_ _)

鏡の私小説  栗原 寛歌集 (短歌研究社ホームページ)
https://tankakenkyu.shop-pro.jp/?pid=170975913

短歌組曲の一作目についてはコチラ↓
【作曲覚書】栗原寛 第四歌集『鏡の私小説』より 短歌組曲「鏡の中の月と星」(短歌 栗原寛 作曲 佐々木典子)
https://dannori.hatenablog.com/entry/2025/05/04/183315

ちょうど1年前に、こまみゆゲストに呼んで貰った折、こまきさんとは「エンディング・テーマ」も共作していて、
なんだか勢いで短歌組曲を作ったのでした。

そして、今年はなぜ新組曲かと言いますと、ふたつ理由があります。

まず、ひとつは、前月3月29日のウィメンズ・ヴォイセスに遡ります。
このときに、ステージ・メイン曲に選んだのが、前作の「鏡の中の月と星」でした。
演奏時間が6分余りと、アルカフェスタなどの尺だと収まりがよくなく、
なかなか演奏機会がなかったのですが、プロ作詞家でもある、あいださとこさんとの共演でしたので、
これは言葉を届ける機会としては丁度いいナーと思い、選んだのでした。

今年になってから、自作短歌もよそさまでやたらとお褒め頂けることがあり、
短歌のスタイルって、音楽と相性いいんだなあと改めて思っていたこともありますが。

さとこさんから、とても嬉しいお言葉が頂けて、私自身も演奏してとても楽しかったので、
また新たに短歌組曲をつくりたくなってしまったのでした。

それと、もうひとつ。3月24日に、卒寿コンサートを目前に亡くなられた、末吉嘉子せんせいの告別式に行った時のことです。
到着すると既に式場は讃美歌で満たされていて、信仰心のない私にもなんだか胸に伝わるものがありました。
こういふ場所と音楽って、なんだか心に染み入るナー

さう思ったら、なんとなく、昨年、組曲を作るときにパラパラと捲っていたら、キリスト教に纏わる短歌がいくつかあったなと思い出し、
栗原寛のシチリア、ローマ紀行についての音楽イメージが生まれたのでした。
ちなみに、栗ちゃんのイタリア訪問は、コロナ禍前によしかずせんせいと、ださうで、
ここにも偲ぶイメージがあるのだと、後から知りました。

作曲は4月6日、晴天下、配達ちうの鼻歌からスタート。イタリア篇で固めることは決めていました。
せっかくだから時系列で、といふことで、掲載順にチョイス。でも、最初と最後の歌は入れたい!

といふことで、この順番になっています。

では、各曲論に。

◎飛行機は西へ西へと向かひをり夜空に時を溯りつつ

イントロはユーミン「中央フリーウェイ」のコーディングが、メロは上昇、コードは下降をたどる拡がりを見せるので、
あんな感じにつけたいナーと。こっちはクルマではなく飛行機だから、ベースをG固定にして(滑走路ですw)、
右手だけで上昇していく感じにしました。栗ちゃん曰く、木下牧子の曲みたいとのことですが、光栄です。何のまっこさんかな。

欧州が西といふ発想にはハッとさせられました。西といへば西方浄土インドですよ。ああ、それが欧州航路も西か~。
明るい西行き(笑)。
「遡りつつ」のフレーズは文字通り遡る上昇音形。2回目の最後はタラップおりた!て感じで元気よく「つつ!」

◎あをぞらはどこまでもあを ゆびさきに香りを残す朝のオレンジ

なんか新婚さんのCMソングみたいになりました(笑)。カーペンターズ「We've only just begun」のモト曲は
銀行のCMだったらしいですが、こちらは、「ハネムーンの次はマイホーム なんとか不動産」のテロップが入りさうです。わは!
コーラス入れたからなほのことwww

「あをぞらは」の「ら」の倚音がお気に入りです。おいちい音

「朝のオレンジ」といふ情景は、映画「ニューシネマパラダイス」のモリコーネ美メロと共にズームアウトして朝のレモンが映るシーンを思い出しました。

◎大人になるたびに失ひゆくなにか丸知野(マルティーノ)の手にひかる十字架

イメージは「マルセリーノのうた」です。おはようマルセーリーノ~♪若いひとは知らないかな。音楽の教科書に載ってて歌ってました。
スペインの映画に出てくる歌ですが、短調なのになぜか長調展開が違和感ないんですよね。

こちらも「大人になるたびに」で怨念ギリギリの情念はじまりなのに、「失ひゆくなにか」で浮上してるんです(笑)
丸知野(マルティーノ)って誰?よくわからないままに作ってしまいましたが、

え!!!?日本人だったんだ!だから漢字なのか!

コトバンクより

◆はら‐マルチノ【原マルチノ】
[1568?~1629]安土桃山時代の天正遣欧使節の副使。肥前の人。マルチノは洗礼名で、本名は未詳。帰国後、通訳・出版に活躍。

異国でおとなになったひとの光と影なんですね。ふむふむ(作る前に調べやうね)。そして、当然アーメン終止。

◎硝子ごしに見てゐるピエタ胸うすきイエスを抱きマリアうつむく

これは讃美歌のイメージです。サン・ピエトロのピエタで合ってるかな?ピエタ像、はじめて見たときは、意外と大きくないんだナーと思った記憶が。
イエスを一瞬で言い切るのは、日本語讃美歌あるあるですね。
「胸うすきイエス」って表現、ぞくっとしました。こういふ言い方できるんだ。栗原寛の美学スゲー

ピエタ像って悲しいシーンのはずなのに、なぜかうつくしさが前に立つんですよね。なのでMajor 7の繰り返し。
ふんとはオルガン音色使いたかったけど、テクニック不足。

◎雨に滲むローマの街に何もかもはるかとなりて旅は終れり

冒頭の4度堆積はローマの石畳。雨のローマもまたうつくしく。シチリア、ローマ紀行おつかれさまでした。
「はるかとなりて」は、な~音のフラット9thにこだわり。帰りたいけどまだ帰りたくないかも。みたいな逡巡です。

そして帰国後、世界はコロナ禍に巻き込まれていくのでした。アーメン終止。

おわりに。旅行会社OL時代、ふらふらと海外に年休取っては出かけてましたが(優待やら社割でw)、
イタリアには3回、シチリアにも1回行きました。好きな国なのです。
システィーナ礼拝堂は巨大な満員電車のやうで、見上げる首があまりに痛いので、隣の日本人とおぼしき男性に
「痛いですね~」と言ったら、ドイツに留学中の韓国人がイタリア旅行してたみたいで、そのあとローマの休日ばりに
デートしたとか、ヘンテコなおもひでがあります。

シチリアでは、納骨堂で見た奇跡の少女(生きているときと同じ状態に見えるミイラ)に驚愕したり、
海辺の宿屋でたそがれたり。ゴッドファーザーは観てないんですけどね(笑)

作品もまた疑似旅みたいなものかな。栗ちゃん、今回の旅に感謝です。