開店躁だん

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こんな夢を見た

冬の山であるもかかわらず、杉の緑は色濃く茂り、枝先に白い雪をうっすら被っている。今からこの山を登るのかと、遥か遠く山頂を仰ぐ。登り始めてみたら、足元が土を蹴らず、空をかくように速く速く、足のみが前に進んでいく。だいぶ中腹の方まで来たと思ったら、手水場があった。そこで、修験僧のような衣を纏う二人の女に出会った。

二人のうち、一人は時代遅れの昭和風パーマをかけた小柄な老婆。もう一人は長い髪の若い女だ。若い女は抜けるような白い顔をしている。手水場の向こう側に立つ老婆はこう言った。

「どれを願うかい?」

ああ、願いごとを言わなければと思い、「家内安全、健康第一、でも、一番望みたいのは、商売繁盛なんですよね。」最後の方はやや照れ笑いながら言ったら、いつの間にか隣に立っていた若い女が話しかけてきた。

「これ以上歌を増やすのをやめないと、健康にはなれないわよ。」

ああ、今年はいくつか歌のグループを増やしたことだしなと思いながら、ふと女の背中越しに見える薄暗い丘のような場所を見やると、墓なのか、廟なのか、何かがありそうな気配がする。しかし、はっきりと目に映る物はない。ここは神所ではなかったのか、そうしたら、あれは見てはいけないものなのだなと、うすぼんやり思っていたら、そこで目が覚めた。

二人の女はどうも遠い身内のような気がしてならないのだが、顔だけはどうしても思い出せない。知らない顔なのに近しい思いがするのは、何らか自分に似た空気を感じ取ったからだろうか。

後から考えたら、山の夢を見る時は、いつも同じ山の風景のようだ。そして夢の中では常に、山の中腹までしか行ったことがない。山の頂上には何があるのだろうか。薄暗い丘と同じようにまた、見てはいけないものがあるのだろうか。しかし、いつか必ず、その場所には行くような気がしている。

(以上、夏目漱石夢十夜」のオマアジュ。夢十夜もまた、夏になると思いだす風物なのだす)